さよならテレゴニー

考えてもいなかった未練のかたまりに気付かされた。燻る感情を持て余す私に、あの人は笑顔で言ったのだ。
「可哀想にね」

「夢みたい」ぼんやり呟く彼女はとろりとした眼に僕を映す。華奢な手が伸ばされ、そっと頬を撫でていく感触がやさしい。胸の奥から込み上げてくる感情の名前が何であるか、僕は知っているけれど。

一縷の可能性すら証明できずに、空白だらけのわたしには呼吸だってままならない。

遠い面影を探してもうまく像が結べずにいる。

お互いを鏡のように映しあって、相手には希望を映している。知らないことに救われているから、知らないでいることに甘えているから、何を映したのかはきっとこれからも聞けない。

どうしたって救われない僕らにハッピーなエンドは似合わない。幸せの形を指でなぞれば答えは分かるのだろうか。

あなたから継いだものは、きっと遺伝子なんてものよりもずっと強くわたしを突き動かしていくのだ。

人は死して名を遺す。神は祀られ名を遺す。鬼は、殺して名を遺すという。

ありもしない記憶をたどれるはずもなく。そもそもの間違いに気づいたところでもう遅い。

行くあてもなくお先真っ暗で、未来はどうしようもない。それでも、わたしは信じている。確かに生き続けるものがあるのだと。

私の意地は一味違うのだ。

会いたい人に会えない真夜中。きっと魔法使いが願いを叶えてくれるよ。

ごまかせない感情は心に押し込めて、ただ夜を走り抜けた。金色の月だけがわたしを見下ろしていた。好きって気持ちだけじゃどこにも行けないだろって、そんなこと思ってもいなかったんだ。

気づいたところでどうにもならない。気持ちにはしっかりと蓋をして閉じ込める、わたしは臆病なおとなだ。

否定しつくされた昔々の迷信。それでも、わたしにとっては信じてもいいと思ったはじめての仮説だった。